― 本日は、2021年度秋学期より着任された新任教員、近藤真史先生にいろいろとお話を伺います。見上げるほどの長身から繰り出される、誰にも真似のできないパワフルな講義が話題となっています。
― 近藤先生の研究分野について教えてくださいますか。
近藤: デジタル回路というのは普通、高速なクロックパルスに同期して一斉に動いています。オーケストラの指揮者が全体を統制するわけなんですが、指揮者の能力次第で全体の性能が決まってしまうんですね。そこで、指揮者つまりクロックパルスのない非同期式回路によって、高性能化、低消費電力化を目指すという研究をしています。
― 指揮者なしで、みな勝手な演奏をしてしまっても問題はないのですか?
近藤: 確かに、大規模な回路での完全な非同期は難しいし、速くなる保証もないんですよ。ですから、回路全体をいくつかのブロックに分けて、各ブロックの中は同期、ブロックの間は非同期、と使い分けるのが最近のトレンドです。
― なるほど、何となくわかりました。その研究をしようとしたきっかけは何だったんですか?
近藤: 大学で、シンプルなCPUを設計するという演習にハマったことがきっかけです。自分がやりたいことはこれだ!とまさにビビッときた瞬間です。でもシンプルなCPUなのでスピードが出なくて、非同期にしたら速くなるんじゃないかと。でもそんなことは授業では習わないし、そもそも実現が難しい。どうしても教えてほしくて、その演習を担当された先生の研究室に入れてもらったわけです。勉強もしましたけど、楽しかったですね。
― なるほど、いい指導者との出会いが先生の運命を決めたんですね。もともとIT系が好きだったんですか?
近藤: 高校生のころ、IT長者のニュースが賑やかだったので、IT系だったら就職に困らないだろう、くらいの気持ちはあったんです。でも、もともとは機械が大好きで、工業高校へ行って機械工学を学びたかったくらいです。キャタピラってありますよね?
― ブルドーザーとかの?
近藤: そう!あのキャタピラがもうほんとに好きで。歯車が、こんな風にがちっと噛み合わさっていて。時計のベルトもキャタピラみたいだから、つい手遊びしたりとか。あと(キャタピラトークしばらく続く)
― ええと、もういいですか?無限に喋れそうですね。確かに、キャタピラのことを無限軌道とはいいますけど。
近藤: すみません、つい。そんなわけでどっちも興味があるから、大学の学科はITと機械の両方ができそうなところを選んだんですよ。そうしたら、ITのゼロかイチかの世界がすごく性に合うことに気付いて、今があります。
― この秋学期から「論路回路II」を担当されていますが、いかがですか?
近藤: 自分の専門分野の講義をできることはこんなにうれしいことなのか、と実感しています。ここは面白い!ここは伝えたい!という気持ちが湧き出てきて、自然とどんどん力が入りますね。
― 先生の講義中、近くの研究室の先生から、声が大きすぎるとクレームが出たという噂は本当ですか?
近藤: 講義後に、「近藤先生なら、マイクは要らないかもですね」と優しくアドバイスをいただきました(笑)
― テンションが高いパワフルな講義は、学生の心にダイレクトに響くと思いますよ。
近藤: ありがとうございます。着任したばかりでまだ講義数が少ないですけど、これからもっと楽しみです。
― ご自身を一言でアピールしてください。
近藤: アピールするなら、「適当」でしょうかね。テキトー、ではなくて、いい意味の適当、です。その時々でメリハリを付けるべきだし、学生にもそう言っています。
― 岡山の印象は?って、近藤先生は岡山のかたでしたね。じゃあ、岡山理科大学の印象は?
近藤: うーん、Z軸が凄いです。
― Z軸?
近藤: つまり、起伏がなかなかのものだということですね。もっとも、最近は両手で輪っかを持ってテレビの前でドタバタやるゲームとかで体力を維持していますので、平気です。あと、本当に自由にやらせていただけるという印象があります。こんなことまで自分で決めていいのか、と、いろいろとカルチャーショックを受けているところです。
― 先生もなかなか凄いZ軸ですよ。192cmでしょう。ところで、情報工学科の印象はいかがですか?
近藤: 着任早々いろいろとご配慮いただいて感謝しています。学生さんもまじめで、よく授業を聞いてくれる印象を持っています。
― 休日はどう過ごされていますか?
近藤: 車で無目的なドライブをすることが多いです。たぶん乗り物が好きなんだと思います。車の通勤も苦ではないし、細い道とかも好きだし。
― じゃあ、キャタピラがついてる乗り物とかどうですか?
近藤: いいですね!戦車のプラモとか、よく作りましたよ!あの、歯車がこう、がちっと噛み合わさっていて(しばらく続く)
― では、これから大学を受験する学生のみなさんへ向けて、メッセージをお願いします。
近藤: 情報工学といっても範囲は広いですから、多少なりとも情報工学の何をやりたいか、くらいは考えた上で入学していただけると、将来につながりやすいと思います。得意科目と絡ませて考えてもいいですね。
ー 高校生の時点で将来まで考えるのはなかなか難しいけれど、大切なことですね。
近藤: きっかけは、ITって面白そう、とかそんなものでもいいんですよ。とにかく、常に疑問を持つことです。研究でも勉強でも鵜呑みにするのではなくて、なんでそうなるんだろうという疑問を持て!疑え!それが次の好奇心へとつながっていきます。とにかく、元気な時には何かやっておくことです。
― 熱いメッセージ、ありがとうございました。ところで、学生時代の何か楽しいエピソードとかありますか?
近藤: いやー、これといって思い浮かばなくて。研究室でキムチ鍋をした次の日、先生に「消臭剤買って来い!」と叱られたりとか、研究室のみんなで食パンを13斤もお取り寄せしたとか、学生が甘いスイカを買ってきてくれたりとか、ゲリラ的にバーベキューしたりとか…あまり面白くなくてすみません。
― いえいえ、ひとつひとつはそう面白くないけど、全部食べ物のエピソードなのが笑えました。長身の近藤先生のパワーを生み出す大切な源ですもんね。ますますのご活躍が楽しみです!
聴き手:上田 千晶(情報工学科・講師)
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